「早生まれは損なのか!?」
こんにちは、服部真人です。
みなさんは「生まれた日」が、その人の人生に影響すると思いますか?
こう聞くと、多くの方は「それは占いの話でしょう」と思われるかもしれません。ところが、この問いに真正面から取り組んでいる研究者たちがいます。
■ 早生まれと遅生まれの「差」■
東京大学の山口慎太郎さん、慶應義塾大学の中室牧子さんらが、経済産業研究所(RIETI)で発表した研究があります。テーマは「生まれ月がスキルやスキル形成に及ぼす影響」。
同じ学年でも、4月生まれと3月生まれでは、ほぼ1年の差があります。研究によると、小学4年生の時点で、学力には偏差値で最大3.5ほどの差が見られたそうです。
ただ、この差は学年が上がるにつれて小さくなり、中学3年生では最大1.5ほどまで縮まっていきます。ここまでは「まあ、そうだろうな」という話です。
興味深いのは、その先です。
自制心や「自分はやればできる」という感覚(自己効力感)といった、テストでは測れない力。こちらの差は、学年が上がってもほとんど縮まらなかったというのです。
■ 差を生んでいたのは「能力」ではなかった■
なぜでしょうか。
研究では、早生まれの子どもたちが学力の差を埋めようと塾や勉強に時間を使い、そのぶんスポーツや習い事の機会が減っていたこと。そして友人や先生との関係について、やや悲観的に感じていたことが指摘されています。
つまり、差を生んでいたのは能力そのものではなく、「周りと比べて、自分はできない」と感じた経験だったのかもしれません。
同じ教室、同じ物差しで比べられ続けると、人は物差しのほうではなく、自分のほうを疑い始めます。
■ カモの足、ツルの足■
中国の古典『荘子』に、こんな一節があります。
「カモの足は短いが、これを継ぎ足せばカモは悲しむ。ツルの足は長いが、これを切ればツルは悲しむ。」
短いから劣っているのでも、長いから優れているのでもない。それぞれに、それぞれの長さの意味がある。二千年以上前の言葉ですが、今の教室や職場にもそのまま当てはまるのではないでしょうか。
■ 生年月日は「運命」ではなく「手がかり」■
ISD個性心理学が生年月日を大切にするのも、同じ理由です。
生年月日で人生が決まる、という話ではありません。生まれた時期によって、その人がどんな物差しを持ちやすいのか。何に安心し、何で力を発揮しやすいのか。それを統計にもとづいて読み解く「手がかり」です。
自分の物差しを知ることが「自分理解」。相手の物差しを知ることが「相手理解」。
この二つがそろうと、「あの人はできない」が「あの人は、ちがう物差しで動いている」に変わります。人間関係のすれちがいの多くは、この言い換えひとつで、ずいぶん楽になるものです。
生まれ月の研究は、まだ始まったばかりです。けれど「生まれた日が人に影響する」という話が、少しずつ占いの棚から、科学の棚へと移りつつあるのは確かなようです。
さて、あなたが知らず知らず自分に当てている物差しは、本当にあなたのものでしょうか。
ちょっとだけ考えてみてはいかがでしょう。カモがツルの足をうらやむ必要はありません。
あしからず